テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和6年10月)
「日銀・政策金利を0.25%で据え置き決定」
今月の特徴は1.日銀・政策金利を0.25%で据え置き決定、2.経常収支・8月としては過去最大、3.貿易赤字3.1兆円超・14%増、4.人手不足の動向、5.エネルギーの動向となった。
日銀が金融政策決定会合の結果を発表。政策金利を0.25%で据え置くことを決めた。日銀・植田総裁は引き続き、慎重に利上げの時期を探っていく方針を強調した。為替に大きな影響を与える日銀の利上げだが、植田総裁はこれまでは米国経済の先行きなどが不透明だとして「利上げの判断には時間的な余裕はある」と繰り返し発言していた。しかし植田総裁は「毎回の会合で判断していく」とも述べ次回、12月の会合での利上げの可能性も排除しなかった(テレ東)。
2.経常収支・8月としては過去最大
日本が海外との貿易や投資でどれだけ稼いだかを示す、ことし8月の経常収支は3兆8036億円の黒字だった。8月の黒字額としては過去最大で、円安を背景に日本企業が海外の子会社から受け取る配当金が増加したことが主な要因。財務省がきょう発表した国際収支によると、ことし8月の日本の経常収支は速報値で3兆8036億円の黒字となり、去年の同じ月と比べて1兆5099億円増えた。黒字は19か月連続で、8月としては比較可能な1985年以降で最も大きくなった(NHK)。
3.貿易赤字3.1兆円超・14%増
財務省が発表した今年4~9月までの貿易統計によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は3兆1000億円余の赤字だった。円安やエネルギー価格の上昇の影響で赤字額は1年前から14%増えた。一方、輸出額は6.6%増加し半期として過去最大となった。(テレ東)。
4.人手不足の動向
ANAは増加する航空貨物需要と人手不足に対応するため、デジタル化された最新の貨物保管施設を公開した。ANAは、これまで成田空港内6カ所に分散していた貨物保管施設を新設された施設を含む2カ所に集約する。東京ドームとほぼ同じ広さを誇り、扱える貨物の量を25%増やすことが可能になった。国内の航空会社で初めて貨物保管施設に自動搬送車を導入し、行き先ごとに荷物を振り分ける作業や運搬を自動で行う。施設を集約し、作業を自動化することで人手不足にも対応できるとしている(テレ朝)。
5.エネルギーの動向
来月で運転開始から50年になる関西電力の高浜原発1号機について、原子力規制委員会は16日に50年を超えた運転を国内の原発で初めて認可した。原発の運転期間は福島第一原発の事故後、原則40年に制限されているが審査に合格すれば、特例で最長で20年間の延長が認められている(TBS)。宮城にある東北電力・女川原発2号機は10月29日、核分裂反応を抑える制御棒を引き抜いて原子炉を起動し、東日本大震災で停止して以来13年半余りを経て再稼働した。東北電力は11月3日、発電を再開する予定だったが原子炉内に入れる計測関連の機器のトラブルが起き、4日に原子炉を停止した。東北電力は現時点で原子炉を再び起動させる時期を未定としていることについて、武藤経済産業大臣は「調査結果の報告を待ちたい」という考えを示した(11/5NHK)。
●新潮流
「賃金上がらない中・注目される最低賃金引上げ」
実質賃金が安定的にプラスとなっていかなければ経済の好循環は見込めない。その為、今回の衆院選では多くの党が公約で最低賃金の引き上げを掲げている。最低賃金を重視するのは非正規を含めて広く賃上げの底上げが期待できる為だ。労使の代表も入って決める仕組みで、政府の強い後押しで毎年、引き上げられている。今年度、全国平均の時給は1055円となり過去最大の51円の引き上げ額となった。石破総理は2020年代に全国平均1500円という高い目標を掲げている。自民党以外の多くの党も1500円という水準を打ち出している。国内の企業が昨年度に手元に残している利益剰余金、いわゆる内部留保は600兆円を超え過去最高となっている。内部留保をため込んでいる企業の多くは最低賃金の引き上げができるかもしれない一方で、業績が厳しい中小企業や零細の事業者は高い水準での引き上げに耐えられないおそれがある。今年上半期に全国で倒産した企業などは4800件余りに上りこの10年で最も多くなった。原材料の高騰や人手不足などが要因で、最低賃金の引き上げに追いつけないところも少なくない。競争力があまりなくても長く続いた超低金利で資金繰りがもっていた企業が退場し、経済の新陳代謝が進むという見方もある。ただ雇用や地域経済への影響を考えると倒産に追い込まれるのは決して望ましい形ではない。経営に行き詰まる前に事業の抜本的な見直し、難しければ事業譲渡や合併などを検討する必要がある。さらに下請けが大手と取り引きする際に価格転嫁しやすくするなど、中小企業対策も議論を尽くすべき。最低賃金を引き上げるためには企業が稼ぐ力をつけることが欠かせない。そのためにも経済の成長戦略をどう描くかが大事(NHK)。
●注目点
「東京メトロ・時価総額9000億円超・2018年以来の大型上場」
地下鉄の「東京メトロ」は23日、東京証券取引所のプライム市場に上場し、国と東京都が保有する株式のうち、合わせて50%が売り出された。取引は午前9時から始まり投資家からの買い注文が膨らんで価格がつかない状態が続いたが、午前10時過ぎ、売り出し価格を430円上回る1株1630円で最初の価格、初値がついた。初値をもとに計算した時価総額はことし最大の9400億円余りで、2018年に上場して初値をもとにした時価総額が7兆円余りになったソフトバンク以来の大型上場となった。株価は初値をつけたあとも1株1768円まで上昇し、時価総額は一時、1兆円を超えた。上場によって売り出される株式のうち国の保有分の売却収入は東日本大震災の復興財源に充てられる。一方、東京都の保有分の売却収入については今後、どのように使うかを検討するという。東京メトロは売り上げのおよそ9割を鉄道事業が占めていることから、投資家に対し事業の多角化などの成長戦略をいかに示すかが試されることになる(NHK)。
●10月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)
「第1位・オリエンタルランド、第2位・フジ・メディア・ホールディングス、第3位・東海旅客鉄道」
2024年10月度のテレビ報道CM価値換算ランキングは45億1212万円で「オリエンタルランド」が第1位に輝いた。具体的には、「ディズニーハロウィーンを満喫・悪役が主催!新パレードを楽しむ」「JAL×ディズニーの特別塗装機・ピーターパンやアナ雪が空へ」「アナ雪など“ディズニー”新幹線」等によるものであった。第2位は「フジテレビ・ドキュメンタリー番組がABU賞審査員特別賞」等の報道で、「フジ・メディア・ホールディングス」となった。第3位は「開業から60年・東海道新幹線出発式」などの報道で、「東海旅客鉄道」。第4位は「ニトリ“家電”CM第2弾は加湿器」などの報道で、「ニトリホールディングス」となった。第5位は「イオンと京成電鉄がタッグ・魅了的な街づくりへ」などの報道で「京成電鉄」、第6位は「東京メトロ上場・時価総額1兆円超」などの報道で「東京地下鉄」、第7位は「東武百貨店・東武動物公園飼育員おしごと体験福袋発表」などの報道で「東武鉄道」、第8位は「ユニクロ・新たな旗艦店・新宿に」などの報道で「ファーストリテイリング」、第9位は「秋の無印良品徹底攻略スペシャル」などの報道で、「良品計画」となった。第10位は「友近、ハリセンボン・近藤春菜が三井ガーデンホテル銀座築地を徹底調査!」などの報道で「三井不動産」となった。
●10月の人物ランキング
「第1位・日本銀行・植田和男総裁、第2位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長、第3位・セブン&アイ・ホールディングス・井阪隆一社長」
第1位・日本銀行・植田和男総裁98件(金融政策決定会合・日銀・政策金利据え置き決定など)、第2位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長41件(異常な暑さ…秋の味覚が“異常事態”など)、第3位・セブン&アイ・ホールディングス・井阪隆一社長41件(セブン&アイホールディングス・コンビニ事業に集中・売り上げ30兆円以上目標など)、第4位・テスラ・イーロンマスクCEO29件(米国テスラ・自動運転タクシー公開など)、第5位・オリンパス・シュテファンカウフマン社長25件(オリンパス・社長が辞任など)、第6位・日本経団連・十倉雅和会長22件(最低賃金1500円公約・経団連会長が苦言など)、第7位・石川鋳造・石川鋼逸社長13件(“フライパン社長”の挑戦続く・目指す町工場改革とは?など)、第8位・ソフトバンクグループ・孫正義会長兼社長12件(ソフトバンクG・孫正義会長兼社長講演・AIは「速さ」から「深さ」へなど)、第9位・PPIH・吉田直樹社長10件(まるで食品スーパー・小売異端児が大変貌!)、第10位・ファーストリテイリング・柳井正会長兼社長10件(決算発表・ユニクロ好調・セブン&アイHD再編へなど)。
●テレビの窓
最新テクノロジーの展示会「CEATEC(シーテック)2024」(千葉市美浜区・幕張メッセ)が15日、開幕した。今年の展示は実におよそ半分以上がAIを使った技術となっている。冷蔵庫についてパナソニックくらしアプライアンス社・中村智典主幹技師が「いつ入庫したか覚えています。いつ冷蔵庫に買ってきたか」と説明。AIカメラ搭載冷凍冷蔵庫はAIカメラが野菜ごとに認識し早く使い切った方が良い物を判断。きょう食べるべきレシピをスマートフォンアプリで紹介する。他にもスマホカメラを10秒見つめるだけで脈拍、ストレス量などがわかるAIが登場。NECバイオメトリクスビジョンAI統括部・大栗玲奈さんは「原理としましては顔の輝度変化というものを利用」と説明した(TBS)。今回出展する企業や団体は去年よりも2割多い808で約10万人の来場を見込んでいるという。三菱電機のブースにあったのは「パズルキューブ」。ロボットが世界最速で面をそろえる。11回の回転を0.3秒で行った。高精度な動きを工場の生産ラインなどで実現できるというアピール。ジャパンディスプレイは何も加工していない植物をセンサーとして活用できる技術。ジャパンディスプレイ・吉田公二さんは「様々な素材がタッチパネルになっている」とコメント。ソニーがアピールしていたのは、人間の目には見えない光を読み取ることで、簡単に物質の違いを見極めることができるというもの。既に食品工場などで異物の発見に使われている。SONY・佐藤大地さんは「リサイクルの工場などでも今後活用を期待している」とコメント。今年のシーテックではAI関連の展示も目立つ。富士通はカメラで撮影するだけで、骨格や筋肉の動きをAIが読み取る技術を実現した(テレ朝)。
JCC株式会社
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