テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和3年7月)
「政府・緊急事態宣言に4府県加え、東京都と沖縄県の緊急事態宣言を延長」
今月の特徴は1.緊急事態宣言延長、2.日銀金融政策決定会合、3.新型コロナ治療薬の動向、4.エネルギーの動向となった。
1.緊急事態宣言延長
東京、沖縄の緊急事態宣言は8月31日まで延長となった。緊急事態宣言に追加された埼玉、千葉、神奈川、大阪は8月2日~31日まで。北海道、石川、京都、兵庫、福岡は8月2日~31日までまん延防止等重点措置が適用される(8/2TBS)。加藤官房長官は急激に感染者数が増加しているとして国民に対し高い警戒感を持って感染対策に取り組むよう協力を呼びかけた(8/2NHK)。
2.日銀金融政策決定会合
日本銀行は金融政策決定会合を開き、現在の大規模な金融緩和策を維持することを決めた。また今年度のGDP成長率の見通しを4月時点の+4.0%から+3.8%に引き下げた。気候変動問題をめぐり投融資支援を促すため、前回の会合で導入を決めた新たな制度では金融機関に対して0%の金利で資金を貸し付けるほか、マイナス金利政策の影響を軽減する優遇策を決めた。景気の現状については「新型コロナの影響で引き続き厳しい状況にあるが、基調としては持ち直している」と判断を維持した(TBS)。気候変動をめぐる日銀の資金供給は、年内をめどに開始し、原則として2030年度まで実施するとしている。当初、日銀は物価の安定という中央銀行の使命とは関係が薄いとしていて、気候変動対応に関与することに対して慎重な姿勢を示していたが、その姿勢が変わった背景には日本政府が気候変動の目標を掲げたことや、海外の中央銀行の間で気候変動問題に積極的に関与しようという動きが広がっていることがある(NHK)。
3.新型コロナ治療薬の動向
厚生労働省は、中外製薬が先月承認申請した開発中の新型コロナウイルス治療薬の製造販売について、早ければ7月中に承認する方向で調整している(8/2承認済み)。審議されるのは、新型コロナウイルスに作用する2つの中和抗体「カシリビマブ」と「イムデビマブ」を組み合わせた点滴薬。2つの抗体を同時投与することで効果を発揮するため、抗体カクテル療法と呼ばれている。米国では去年11月に緊急使用許可が出ていて、トランプ前大統領が感染した際にも使用された。国内ではこれまでに「レムデシビル」「デキサメタゾン」「バリシチニブ」の3つの製品が新型コロナ治療薬として承認されている(フジ)。
4.エネルギーの動向
政府は温室効果ガスを2030年までに46%削減する目標を達成するため、エネルギー基本計画の原案を発表した。二酸化炭素の排出量が多い火力発電の代わりに主力電源と位置付けたのは再生可能エネルギー。今の2倍に当たる36%~38%にまで引き上げるとしていて、経産省幹部は短期的に増やせるのは「太陽光発電しかない」としている。政府が注目するのが、厚さわずか1mmの次世代型太陽光パネル。東芝・研究開発センター・水口浩司は「薄くて軽いので、そのまま貼ることができると期待され、設置も簡単」と述べた。フィルム型のパネルは将来的に建物の壁など、狭い場所でも発電ができると期待されている(日テレ)。清水建設は洋上風力発電の建設を手掛けるノルウェーのフレッドオルセンオーシャン社と協業の覚書を結んだ。洋上風車を建設する専用船の運航訓練や、風車据え付け工事の技術支援を受ける。一方、信越化学工業は風力発電機などの脱炭素製品向けシリコーンを増産することを決めた。2022年3月期に100億円を投じ、群馬事業所の設備を拡充する(テレ東)。
●新潮流
「国内初・量子コンピューター・スパコン超え性能どう活用?」
米国IBMが開発した量子コンピューターが、日本で初めて商業利用される。従来のコンピューターは、0と1の組み合わせで情報を処理するのに対し、量子コンピューターで使う量子には0でもあり1でもあるという特殊な状態があるため、まとめて計算できる。量子コンピューターは、トヨタ自動車、日立製作所など、12社が参加する産学の協議会が主体となって利用される。化学メーカーのJSRは、半導体に不可欠なフォトレジストという材料のほか、液晶ディスプレイに使われる材料などを手がけている。新たな商品の開発には原料の候補となる多くの物質から適切な物質を見つけるのに実験を繰り返す必要があり、年単位の時間がかかることもある。実際の実験に至る前に、無数の組み合わせのシミュレーションが必要で、現在、通常のパソコンを使って行っている。量子コンピューターを使うと研究開発期間の短縮が見込まれ、コストの削減にもつながる。医薬品やさまざまな電子機器に使われる半導体の材料の開発などで量子コンピューターをいかに使いこなせるか。今後の企業の競争力を左右しそう(テレ東)。
●注目点
「国産ワクチン開発の最前線」
世界中でワクチン不足になっている中、大手製薬会社、第一三共(埼玉・北本)の埼玉県にある工場で国産の「mRNAワクチン」の大量生産に向けて整備が進められている。ここでmRNAを精製したり、余分な成分を取り除いたりしてワクチンを作る予定。第一三共は現在、国産「mRNAワクチン」の臨床試験を約150人を対象に行っているが、年内にも、ワクチンを数千人に投与する最終段階の臨床試験を始める準備を進めている。大規模な臨床試験が倫理的に難しいとされている中、会社では「開発中のワクチンを投与した人」と「既に実用化されたワクチンを投与した人」の抗体の値を比べて遜色がないことを確認する非劣性試験という方法をとり、この結果を踏まえて、国に承認の申請を行う方針。承認されれば埼玉県の工場でワクチンを大量生産することができる。国内メーカーでは第一三共を含めて、これまでに4社(他3社:KMバイオロジクス、アンジェス、塩野義製薬)が開発中のワクチンを人に投与する臨床試験を行っている。このうちアンジェスは500人規模で最終段階の臨床試験を行っていて、今後の大規模試験については国の審査機関などの方針によるとしている(NHK)。
●7月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)
「第1位・ミニストップ、第2位・リンガーハット、第3位・神戸物産」
2021年7月度におけるCM価値換算ランキングは「ミニストップ」が25億1800万円で第1位に輝いた。具体的には、「ミニストップ」の「スイーツの紹介」の特集だった。第2位は「リンガーハットが起死回生のメニュー」などの報道で「リンガーハット」となった。第3位は「神戸物産は6月決算発表以降上昇が続いている」などの報道で「神戸物産」、第4位は「ガストが、から揚げ業界に参入」などの報道で「すかいらーくホールディングス」、第5位は「夏に激増!侵入&繁殖する害虫・プロが教える・家に寄せ付けない秘訣」などの報道で「ダスキン」、第6位は「株式会社TOKIOの3人が出演する丸亀製麺のCMが解禁された」などの報道で「トリドールホールディングス」、第7位は「民間旅行も!宇宙!“新時代”へ・野口聡一宇宙飛行士に聞く」などの報道で「宇宙航空研究開発機構」、第8位は「五輪スポンサー問題で波紋」などの報道で「アサヒグループホールディングス」となった。第9位は「東急電鉄・電車がシェアオフィスに」などの報道で「東急」、第10位は「カンヌで14分の拍手喝采・細田守監督・最新作初日」などの報道で「東宝」となった。
●7月の人物ランキング
「第1位・AMAZON・ジェフベゾスCEO、第2位・ファイザー社・アルバートブーラCEO、第3位・三菱電機・杉山武史社長」
第1位・AMAZON・ジェフベゾスCEO120件(アマゾン創業者ベゾス氏・宇宙旅行に成功など)、第2位・ファイザー社・アルバートブーラCEO38件(未納入ワクチン前倒しを・菅首相ファイザーCEOと直接交渉へなど)、第3位・三菱電機・杉山武史社長25件(三菱電機・杉山社長が辞意表明など)、第4位・トヨタ自動車・豊田章男社長20件(トヨタが五輪用CM差し替え・大会支援は継続など)、第5位・スペースX・イーロンマスクCEO15件(有人宇宙旅行に成功・シンガポールまで28分も!?など)、第6位・カッパ・クリエイト・田辺公己社長11件(はま寿司「かっぱ寿司」社長を告訴など)、第7位・経団連・十倉雅和会長10件(五輪開会式欠席・経済界に広がるなど)、第8位・東京電力・小早川智明社長7件(原子力規制委が東電本社に立ち入りなど)、第9位・KMバイオロジクス・永里敏秋社長5件(国産ワクチン開発・カメラが見た!“厳戒エリア”とはなど)、第10位・アキダイ・秋葉弘道社長5件(観戦にピッタリ!“おうちグッズ”など)。
●テレビの窓
「東京五輪を彩るニッポンの技術力」
スーツ専門店のAOKIは日本の代表選手団が開会式で着た公式の服装を作った。生地には小さな穴があいているが、表から見ると透けない特別な生地を採用している。ジャケットには工字つなぎという文様がプリントされており、これは縁起のよい柄として着物などに採用されてきた柄。パンツの裏側には「TOKYO2020」の文字。すべて国内で生産されている。日本代表が着る公式の服装は毎回、注目を集めてきた。初めて日本で開催された1964年の東京大会では秋空に映える赤のジャケットに白のパンツやスカートで登場。日の丸のイメージを全面的に打ち出した。ことしは夏の開催のため爽やかさを伝える白をジャケットに採用。前回の東京大会の配色を上下逆にした。さらに、フォーマルな服装でもあるスーツで、さまざまな国を迎え入れる立場を表現した。スーツは、すべて選手一人一人に合わせたフルオーダーメード。そこで培ったスーツ作りの技術力やフィッティング技術を今後の製品作りに生かしている(テレ東)。
JCC株式会社