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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和6年8月)

「4月~6月GDP改定値・+2.9%」「株価が乱高下」

今月の特徴は1.4月~6月GDP改定値・+2.9%、2.日銀の動向、3.経常収支12.6兆円の黒字、4.外国人観光客の動向、5.人手不足の動向、6.エネルギーの動向となった。

 

1.4月~6月GDP改定値・+2.9%

内閣府が発表したことし4月から6月までのGDP(国内総生産)の改定値は、物価の変動を除いた実質の伸び率が前の3か月と比べて+0.7%だった。これが1年間続いた場合の年率に換算すると+2.9%となり、先月15日に発表された速報値から0.2ポイント下方修正された。GDPの伸び率がプラスとなるのは2期ぶり。GDPの半分以上を占める個人消費は、前の3か月からの伸び率が速報値の+1.0%から+0.9%に引き下げられた。企業の設備投資も最新の統計の結果を反映した結果、速報値の+0.9%から+0.8%に引き下げられた。一方モノやサービスの輸出は+1.5%と、速報値から0.1ポイント引き上げられた。輸入は+1.7%と速報値と同じ水準だった。4月から6月までのGDPでは個人消費が5期ぶりにプラスに転じていて、今後も消費の伸びが続き経済の成長に勢いがつくかが焦点(NHK9/9)。

 

2.日銀の動向

史上最大の暴落など株価が乱高下したことを受けて、日本銀行・植田和男総裁が23日、国会で説明を求められた。日経平均株価が4000円以上暴落した“令和のブラックマンデー”の発端とされるのは先月末に日銀が踏み切った「2度目の利上げ」。米国の景気不安も重なり、過去最大の下げ幅を記録、翌日には一転して過去最大の上げ幅となった。為替も急速に円高に進むなど不安定な動きとなった。植田総裁は株価乱高下の理由について「米国の景気減速懸念が急速に広がったのが大きかった」と説明。金融市場について「引き続き不安定な状況にあると認識している」として、今後も注視していくと強調した(日テレ)。

 

3.経常収支12.6兆円の黒字

財務省が発表した今年1月から6月までの経常収支は12兆6817億円の黒字となった。自動車などの輸出が伸び貿易赤字幅が縮小したことで、去年の上半期に比べて黒字幅は4兆7148億円拡大した。さらに海外の金利や円安の影響で海外資産による利子や配当収入を表す第一次所得収支の黒字幅が拡大し、半期として過去最大の19兆1969億円の黒字となった(TBS)。

 

4.外国人観光客の動向

政府が2030年に外国人観光客を年間6000万人にすることを目指す中、日本政府観光局(JNTO)は「上半期に日本を訪れた外国人は約1778万人だった」と発表した。年間で過去最多の外国人が訪れた2019年を超え、観光庁の試算ではことしは約3500万人と予想している。東京都は美術館などの開館時間の延長、都庁のプロジェクションマッピングを行うなど、夜間東京の観光スポットを訪れてもらい、経済を活性化させる「ナイトタイム観光」を推し進めている(テレ朝)。

 

5.人手不足の動向

NTTはAIの活用によって省エネや人手不足などの社会課題を解決していきたいと意欲を示している。26日に設立する「NTTAI-CIX」では、複数のAIが業務や業界を横断し、互いに連携する連鎖型AIを活用したサービスを提供する。具体的には小売業の流通サプライチェーンでメーカーや卸業者と連携し在庫などを最適化したり、ビルの空調を人の流れに合わせて稼働することで省エネにつなげるなどとしている(テレ東)。

 

6.エネルギーの動向

再生可能エネルギーや原子力発電などの「脱炭素電源」の建設や運営は、投資額が大きく事業期間も長期にわたるため、収入や費用が変動して投資額を回収できなくなるリスクが大きいことが課題となっている。このため政府は、事業者が投資を回収しやすくする新たな仕組みを検討する。原発の新増設でコストが上昇した場合の負担を電気の利用者や国も負う、海外の事例も参考にするとしている。政府は27日に開かれるGX実行会議で仕組みの検討を表明した上で、年内にとりまとめる新たな国家戦略に具体策を盛り込むことにしている(NHK)。一方、原子力規制委員会は定例会合で、日本原子力発電の敦賀原発2号機の再稼働を不合格とする審査書案を了承した。不合格は規制委員会が発足して以来、初めての判断となる(テレ東)。

 

 

●新潮流

「三菱自動車も合流・ホンダ・日産・EVなどで連携」

V・電気自動車分野でホンダ日産三菱自動車が提携し、3社連合が誕生する。ホンダ・三部社長は「しっかりと握手ができるまで進展が図られた」と述べた。日産自動車・内田社長は「我々が競争力をつけていくことを踏まえると、仲間を増やしていくことだと思っている」とした。具体的な提携内容の1つは、車に搭載するソフトウェアの基礎研究を共同で行うこと。またEVのモーターなどの部品や、バッテリー使用の共通化などでも合意した。さらにこの提携には三菱自動車も加わる。日産は世界で初めて5人乗りEVを量産した知見があり、ホンダには自動運転など先進技術に強みがあることから提携で生き残りを図りたい考え。経済部・自動車担当・梅田記者は「両社は欧米や中国メーカーが台頭する中、EVでの出遅れを認めている。追いつくためには規模の拡大や開発スピードの加速が必要で、単独では生き残れないと判断し、合意に至った」と指摘した。ライバルのホンダと日産はあえて手を組み、国内そして世界での“競争力”を高める狙いがあると言えそうだ(TBS)。

 

 

●注目点

「アリマンタシォンクシュタール社・セブン&アイHDに買収提案」

ナダのコンビニ大手・アリマンタシォンクシュタール社が、日本のセブン&アイHDに対して買収を提案した。買収額は少なくとも5兆円を超えるとみられ、実現すれば海外企業による買収としては過去最大級のものとなる。セブン&アイHDはコンビニのセブンイレブンやイトーヨーカドー、ロフトなどを展開している。アリマンタシォンクシュタールは1980年創業。カナダや米国、ヨーロッパなど約30の国と地域でガソリンスタンド併設のコンビニなどを展開している。この会社の特徴はM&A(企業合併、買収)を繰り返して事業を拡大してきたこと。米国のコンビニ市場を見ると、1位がセブンイレブン、2位にアリマンタシォンクシュタールのサークルKで、買収が成立すればコンビニ市場で1位となる。アリマンタシォンクシュタールの創業者・アランブシャール会長は、アジア市場進出に向けて以前からセブン&アイHDに関心を寄せており、過去2005年と2020年に2度買収を提案したが、いずれも実現しなかった。セブン&アイHDの店舗数は約8万5000、アリマンタシォンクシュタールは約1万6700、売上高はセブン&アイHDが約11兆円だが、アリマンタシォンクシュタールが約10兆円。ただ時価総額を見ると、セブン&アイHDは約5兆2000億円、アリマンタシォンクシュタールは約1.6倍の約8兆4000億円なので、企業価値はアリマンタシォンクシュタールが上回っている。経済評論家・加谷珪一氏は「セブン&アイHDは不採算事業を抱えている上に、ここ数年株価が上がっていない。円安の影響で海外から割安と映ったことが影響している」と指摘する(TBS)。 

 

 

8月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・オリエンタルランド、第2位・三井不動産、第3位・東日本旅客鉄道」

2024年8月度のテレビ報道CM価値換算ランキングは「オリエンタルランド」が68億1056万円で第1位に輝いた。具体的には、「591人に聞いた!推しショー・パレード・夜を彩る!光とファンタジーの世界」「学んでより楽しい!ディズニーシー・巡り方」等によるものであった。第2位は「変わる町並み・未来都市は?堤キャスター・再開発の現場へ」等の報道で、「三井不動産」となった。第3位は「新幹線から指令室まで激レア(秘)映像大公開」などの報道で、「東日本旅客鉄道」。第4位は「業務スーパーのコスパ最強は?」などの報道で、「神戸物産」となった。第5位は「電力小売りに参入・セブン&アイHD」などの報道で「セブン&アイ・ホールディングス」、第6位は「集結・豪華出演者・史上最大5日間・テレ朝・ドリフェス」などの報道で「テレビ朝日ホールディングス」、第7位は「東京ソラマチ5階で大昆虫展が開催」などの報道で「東武鉄道」、第8位は「再開発のラストピース・渋谷サクラステージ徹底攻略」などの報道で、「東急不動産ホールディングス」となった。第9位は「ブルーノマーズ・ドンキをプロデュース」などの報道で「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」、第10位は「なぜヒルズに地下鉄新駅が?森ビル“勝てる”街づくり!」などの報道で「森ビル」となった。

 

 

8月の人物ランキング

「第1位・日本銀行・植田和男総裁、第2位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長、第3位・東京電力・小早川智明社長」

第1位・日本銀行・植田和男総裁120件(日銀・植田総裁・さらなる利上げ示唆など)、第2位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長34件(なぜ?コメ「在庫の有無」に違いなど)、第3位・東京電力・小早川智明社長22件(東京電力柏崎刈羽原発・一部の廃炉計画前倒しへなど)、第4位・日本航空・鳥取三津子社長22件(日航機墜落・39年・慰霊式など)、第5位・トヨタ自動車・佐藤恒治社長14件(認証不正めぐり・トヨタが再発防止策提出など)、第6位・U-NEXTホールディングス・宇野康秀社長11件(2度の危機を乗り越えた!赤字の動画配信復活のワケなど)、第7位・吉野家HD・河村泰貴社長11件(吉野家ダチョウ肉の丼販売など)、第8位・ゴンチャジャパン・角田淳社長9件(世界展開チェーン日本で躍進・驚きの商品開発のウラ側など)、第9位・ライフコーポレーション・岩崎高治社長8件(三菱商事出身の社長が改革!トップダウンから現場主導になど)、第10位・日榮新化・清水寛三社長7件(年商110億円・粘着フィルムの総合メーカー・リサイクルで廃棄物ゼロへなど)。

 

 

●テレビの窓

「相次ぐ豪雨で注目集める防災用品」

雨への備えが企業などで広がっている。千葉市で電気工事会社を経営する男性が今年の春に購入したのが大雨による家屋などの浸水被害を防ぐ止水板。突起を差し込み、板を重ねるようにして固定することで、最終的にブロック塀とつながり10分ほどで壁のようになる。購入したきっかけは去年9月に発生した台風13号。事務所の前が川のようになり浸水してしまったという。接近する台風10号に備え、今回この止水板を設置する予定。この止水板を開発したメーカーには今、問い合わせが急増しているという。改良を重ね、3年ほど前から販売を開始し300kgの水圧にも耐えることができる。大量の水も漏らさず、せき止めることができる。プラスチックの裏側にはスポンジとゴムを使うことで地面との隙間をなくし、水が漏れない仕組みになっている。プラスチック板は、一枚およそ4kg。高齢者や女性でも簡単に運ぶことができるのが特徴。価格は1枚4万円ほどで戸建住宅はもちろん、マンションのエントランスや地下駐車場の入り口など、さまざまな場所で活用できるという。フジ鋼業・藤井健吾社長は「ゲリラ豪雨が1つの要因で徐々に注目されている。ハザードマップで赤くなっているところでは対象になるので設置する場所が多い」と語った。一方、静岡市清水区の地震の揺れを軽減する家などを販売している住宅メーカーでは、大雨の浸水被害から車を守るシートを開発した。車をシートでくるむことで船のような状態にして車を浮かせ被害を防ぐ。およそ6分で装着することができる。実証実験ではシートで覆われた車が浮力によって船のように浮き車内への浸水を防ぐことが確認された。過去に静岡県を襲った台風で多くの車が水没の被害に遭ったことから開発したという。価格は8万8000円。6月から販売を開始し、手応えを感じているという(テレ東)。

 

JCC株式会社