テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和6年7月)
「日経平均株価急落・今年最大の下げ幅に」「日銀0.25%程度追加利上げ決定」
今月の特徴は1.日銀0.25%程度追加利上げ決定、2.日経平均株価急落・今年最大の下げ幅に、3.外国人観光客の動向、4.人手不足の動向、5.エネルギーの動向となった。
日本銀行は金融政策決定会合で追加利上げを行い、政策金利を0.25%程度まで引き上げることを決めた。歴史的な物価高の要因となった円安だが、利上げ決定直前は1ドル152円台半ばだったため、ほぼ2円円高が進んだ。追加利上げで生活にはプラスマイナス両面の影響が出てきそう。普通預金や定期預金などの預金金利は上昇する見込みがある一方、住宅ローンの変動型金利は上昇する可能性がある。特に住宅ローンの残高が多い20代~40代にとっては影響が大きくなる。利上げは景気を“冷やす”が、植田総裁は賃上げの広がりが今後の個人消費を支え、緩やかに消費は増加していくという見通しを示した(日テレ)。
2.日経平均株価急落・今年最大の下げ幅に
25日、日経平均株価は一時1300円以上値下がりした。終値は前日の終値より1285円34銭安い3万7869円51銭と、終値としてはことし最大の下げ幅で、8年前の英国のEU離脱(ブレグジット)以来の大幅な値下がりとなった。要因は大きく2つあり、1つ目は24日のニューヨーク市場の株価の下落。23日に発表された米国のテスラやグーグルの親会社の決算の内容を受けて、企業業績の先行きへの懸念が広がり、ハイテク関連銘柄の多いナスダックの株価指数が今年最大の下落率となるなど、株価が大幅に下落した影響を受けた。2つ目は円高の進行。25日は、株式の取り引き時間中に1ドル152円台まで円高が進み、自動車や電機など輸出関連の銘柄にも売り注文が膨らんだ(NHK)。
3.外国人観光客の動向
今年上半期の訪日外国人者数は1770万人を超え過去最高となったが、その多くは東京や大阪などの都市部に偏っているのが現状。19日、政府は観光立国推進閣僚会議で観光客を地方へ誘導するため、全国の国立公園に高級リゾートホテルなどを誘致する方針を示した。環境保全や地域の理解を得ながら2031年までに進めていくという(日テレ)。
4.人手不足の動向
物流業界で人手不足の深刻化が懸念される2024年問題に対応しようと、日用品や冷凍食品など業界ごとに企業が一体となって配送の効率化を進める動きが活発になっている。このうち日用品の分野では、ライオンやユニチャームなど、業界の主なメーカー14社が参加し、物流の効率化に連携して取り組むための協議会をことし5月に立ち上げた。共通のシステムを導入することで検品作業の効率化やドライバーの待ち時間の短縮などにつなげたいとしている。また、冷凍食品メーカーではマルハニチロやニッスイなど、5社が商品の保管や配送を共同で進め、トラックの積載率の向上などを図っていくとしているほか、化学品メーカーでは三菱ケミカルグループや三井化学などで作る団体がことし9月から関東と東海で共同配送の実証実験を始めるなどの動きが広がっている(NHK)。
5.エネルギーの動向
脱炭素社会の実現や、効率的な送電網の整備に向けて岸田首相は再生可能エネルギーや原子力発電などによる電力が豊富なエリアに産業を集積させるため、新たな支援制度などの検討を急ぐ考えを示した。一方、福井・敦賀原子力発電所2号機について、原子力規制庁は26日に開いた審査会合で、「原発の規制基準に適合しているとは認められない」とする結論をまとめた。原子炉建屋の真下を走る断層が将来動く可能性を否定することは困難だとしていて、事実上、再稼働を認めない結論を出すのは、2012年の発足後初めて。今後、原子力規制委員会が最終的に判断することになるが、審査会合の結論が受け入れられる公算が大きく、その場合、日本原電が改めて審査を申請するか廃炉にするかといった判断を迫られることになる(NHK)。
●新潮流
「金利ある世界が復活か」
日銀が追加利上げを決定した。今回の動きは日本にも金利のある世界が本格的に戻ってくることを示唆する動きと言われている。例えばメガバンク3行(三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行)は、31日、普通預金の金利について、今よりも5倍に引き上げると発表した。マイナス面は、住宅ローンの金利、企業も借り入れの金利が上昇して、負担が重くなる。今後、金利がどんどん上がっていく可能性もある。日銀・植田総裁は「このまま経済の物価が順調に進んでいけば、それに合わせて金利をまた上げていく」と述べた。日銀は今回の0.25%への利上げは、大きな影響は出ないと見てはいるが、日本の場合、金利がゼロ近くで続いてきた歴史があるので、金利の上昇局面に対して、不慣れな状態があるというのは否めない。日銀は影響を注意深く見ながら、今後の政策のかじ取りを進めていく必要がある。「利上げはまだ少し早いのでは」という声が結構多くあった一方で、日銀主要メンバーの中心で高まっていたのが、長引く円安への警戒感だった。円安が続いた場合、物価がさらに上振れてしまい、消費者、企業活動にも悪影響を与えてしまう警戒が高まっていたことが、今回の利上げの決断を後押しする形になった。円安に対しては、政府が主導して、最近為替介入を繰り返して、円安を是正する形が続いた。日銀の場合は、為替を直接操作するという政策は取らないというスタンスではあるが、今回、日銀も、円安が及ぼす物価上振れのリスクに対して手を打ったといえる(NHK)。
●注目点
「企業が警戒を強めるサイバー攻撃・ランサムウェア被害相次ぐ」
ハッカーによるサイバー攻撃で企業への被害が相次いでいる。6月には出版大手のKADOKAWAとそのグループ会社が「ブラックスーツ」を名乗るハッカー集団からサイバー攻撃を受け、従業員や顧客らの個人情報が流出した。動画配信サービス、書籍の受注や物流システムなど一部が停止するなど、今も大きな影響が続いている。つい先日は自治体や企業から業務委託されていた京都市の情報処理サービス会社が攻撃を受け、愛知県豊田市で延べ42万人分の個人情報が流出した。被害を与えたとみられるウイルスには共通点があり、それはランサムウェアによるものだということ。ランサムは身代金を意味する英語で、ランサムとソフトウェアを組み合わせた言葉がランサムウェア。サイバー攻撃を受けるとパソコンやスマートフォンがウイルスに感染し、保存されているファイルなどのデータが勝手に暗号化され、使えない状態になる。ハッカーは元に戻すことと引き換えに身代金を要求してくる為、セキュリティー対策が急務となる。警察庁によると、去年ランサムウェアによる被害は197件あり、その半分以上が中小企業。中小企業は、セキュリティーにかけるコストや人員が十分ではなく標的にされやすいという(テレ朝)。
●7月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)
「第1位・ミニストップ、第2位・オリエンタルランド、第3位・三井不動産」
2024年7月度のテレビ報道CM価値換算ランキングは34億3472万円で「ミニストップ」が第1位となった。具体的には、「ミニストップジャッジ&大ヒットのヒミツ」「ミニストップのハロハロ果実氷すいか」等によるものであった。第2位は「開業当初から人気・スペースマウンテンに別れ」等の報道で、「オリエンタルランド」となった。第3位は「入居金最高6億円・超高級シニア向け住宅」などの報道で、「三井不動産」。第4位は「20年ぶり新紙幣発行」などの報道で、「日本銀行」となった。第5位は「NG行為を9種に分類・ANAとJAL・カスハラ対策」などの報道で「日本航空」、第6位は「東京メトロ 巨大地下鉄ネットワークを観察!」などの報道で「東京地下鉄」、第7位は「H3ロケット3号機打ち上げ・だいち4号軌道投入に成功」などの報道で「宇宙航空研究開発機構」、第8位は「テレ朝夏祭り・豪華アーティスト熱演」などの報道で、「テレビ朝日ホールディングス」となった。第9位は「バーミヤンで満腹になるまで食べたらいくら?」などの報道で「すかいらーくホールディングス」、第10位は「怪盗グルーのミニオン超変身・大物歌手参加」などの報道で「東宝」となった。
●7月の人物ランキング
「第1位・日本銀行・植田和男総裁、第2位・小林製薬・小林章浩社長、第3位・楽天グループ・三木谷浩史社長」
第1位・日本銀行・植田和男総裁92件(日銀0.25%程度追加利上げ決定など)、第2位・小林製薬・小林章浩社長39件(紅麹問題・小林製薬・会長と社長辞任など)、第3位・楽天グループ・三木谷浩史社長31件(ロシアが制裁対抗措置で入国禁止・三木谷社長・豊田会長の名もなど)、第4位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長29件(このままだと高級食材に・猛暑で豚肉ピンチなど)、第5位・日本経団連・十倉雅和会長17件(経団連・グローバル人材育成など提言など)、第6位・KADOKAWAドワンゴ・夏野剛社長16件(KADOKAWAを狙った・サイバー攻撃の手口とは?など)、第7位・京急百貨店・金子新司社長16件(うなぎ食べ・147人体調不良など)、第8位・DGTAKANO・高野雅彰社長11件(世界にイノベーションを・下町のクリエーティブ集団など)、第9位・温故知新・松山知樹社長10件(わざわざ行きたくなる宿・満足生む…おもてなしのウラ側など)、第10位・トヨタ自動車・佐藤恒治社長9件(トヨタに初の是正命令など)。
●テレビの窓
「上海で、AI(人工知能)に関する技術を集めた展示会が開幕」
今年で7回目を迎えるAIの展示会「2024世界人工知能大会」が中国・上海で開催された。今年は、初めて李強首相が演説するなど、中国政府のAI産業への意気込みの強さがうかがえるものとなった。IT大手の「百度」は提供するAIサービスの大幅値下げを発表した。中国政府は去年、人型ロボットを新たな経済成長の柱に据え、2027年までに世界をリードするとした国家目標を発表し、各社が開発に力を入れている。さらに中国が力を入れるのは一般家庭へのロボットの導入。家庭用ロボットはAIアルゴリズムを活用し、モーターとセンサーで人間の表情を再現する。将来的には人間と同等の感情表現を目指しているという(テレ東)。今回の展示で、注目されたのは米国・テスラの次世代ロボット「オプティマス」だった。既に米国の工場で仕分けや工場内の見回りを行っているという。国連の世界知的所有権機関が公表したデータによると、生成AIに関する特許出願件数は2023年までの10年間で中国が3万8000件以上と世界第1位で、これは2位の米国のおよそ6倍、日本の11倍以上に及ぶ。中国は2030年にはAI分野での総合力が世界トップ水準になることを目指している(フジ)。
JCC株式会社