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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和4年2月)

「ウクライナ軍事侵攻・日本のエネルギー・生活コストなどを直撃か」

今月の特徴は1.ウクライナ軍事侵攻・日本のエネルギー・生活コストなどを直撃か、2.GDP2期ぶりプラスに、3.新薬・ワクチン接種の動向、4.春闘の動向、5.エネルギーの動向となった。         

 

1.ウクライナ軍事侵攻・日本のエネルギー・生活コストなどを直撃か

ロシアがウクライナに侵攻した日本への影響についてニッセイ基礎研究所・上野剛志上席エコノミストは「石油、天然ガスの価格がさらに跳ね上がってくる可能性がある。ガソリン代が値上がりし、電気代、ガス代も上がってくるだろう」と分析した。漁船やビニールハウスの燃料費や光熱費が上がることで、魚や野菜の値段も上がるおそれが出ている。さらに、石油が材料の弁当、カップ麺の容器、ごみ袋や不織布マスクも、同様に値上げになる可能性が高い。家畜の餌となる小麦やトウモロコシの値段が上がれば、肉類の価格が上がる可能性もある。世界的に不足している半導体の製造にも影響が及びそうである(日テレ)。

 

2.GDP2期ぶりプラスに

内閣府が発表した去年10月から12月のGDP国内総生産の成長率は、年率換算で実質プラス5.4%と2四半期ぶりのプラス成長となった。新型コロナの感染が落ち着き、旅行や外食など個人消費が回復したことが大きな要因となった。ただし、先行きは不透明であり、専門家は物価高やウクライナ情勢など不安要素が多いためと分析している(テレ朝)。

 

3.新薬・ワクチン接種の動向

塩野義製薬が厚生労働省に日本初のコロナ飲み薬の承認を申請した。治験では体内のウイルス量が減り、服用4日目で9割以上の人が他人に感染させるリスクが低下したという。さらにセキやのどの痛みなど呼吸器症状にも改善効果があった。軽症者、中等症者向けで1日1回5日間服用する必要がある。3月末までに100万人分、4月以降は年間1000万人分を作ることができるという。医療ジャーナリスト・森豊医師は「メルクファイザーの薬と異なるのは感染者、誰もが服用できること。インフルエンザの薬のように診断することで出せる」としている(TBS)。一方、後藤厚労相は3回目のワクチン接種を職場接種で行うための人数を緩和し、より規模の小さい企業や団体でも申し込めるようにすることを明らかにした。中小企業の合同職場接種は費用補助の上限を引き上げる方針であり、職場での3回目接種の加速を狙っている(テレ東)。

 

4.春闘の動向

24日午後、岸田首相と面会したトヨタ自動車・豊田章男社長は組合側との春闘交渉について「満額という形になる」と話した。豊田社長は組合員だけでなく、それ以外の全ての従業員を念頭に「いろんな仕事をしている人達が報われるような流れを作るように総理からもご尽力いただきたい」と岸田首相に伝えた。これに対し岸田首相は「働いているすべての人たちがより報われる環境作りを応援したい」と話したという(日テレ)。これまでに明らかになっている主な企業の労働組合の要求は、前年を上回る要求が目立っている。川崎重工業は、去年は新型コロナの影響で業績が厳しかったことからベースアップ相当の賃上げ要求を見送ったが、今年は感染拡大前の水準を上回る要求をした。ホンダ三菱自動車マツダは、ベアも含めた賃上げを要求した。NTTでは定期昇給分と合わせて4%程度の賃上げを要求した。こうした賃上げを、政府も後押しをしており、岸田首相はあらゆる政策を総動員し、企業側が賃上げしやすい環境整備を行う考えを示している(NHK)。

 

 

5.エネルギーの動向

原油は国際的な、指標価格が7年7か月ぶりに1バレル100ドルを超えた。みずほ証券・三浦豊シニアテクニカルアナリストは「原油価格の動向が一つのポイント。価格上昇を通じて物価高の影響も出てくる」と分析した。山際経済再生担当大臣は会見で「エネルギー価格の急激な変化は日本の経済を棄損する可能性がある」と危機感を示した。事態が更に悪化しなければ、影響はある程度限定的になるのではという声もあるが、日本経済がウクライナ情勢に左右される不安定な状況が続きそうである(テレ朝)。一方、EUでは、原発と天然ガスについて、地球温暖化の抑制につながる投資先として、条件付きで認定する最終方針を各国に正式に提案した。将来的に再生可能エネルギー中心の社会に移行するまでこの2つを「グリーン」なエネルギーと位置づけ、必要な資金の確保を後押していくという(テレ東)。

 

 

●新潮流

「注目集める最新式セルフレジ」

ブンイレブンに世界初の非接触型のレジが登場した。実証実験として都内の6店舗に設置されたもので、レジ画面をタッチパネルのように使用できる最新技術が使われている。液晶画面を指で触る必要がない。店頭に並んでいないセブンカフェの商品や新聞なども購入可能で、お酒やたばこなどを除き、店内のほとんどの商品をこの空中レジで買うことができる。現金は使えないが、交通系電子マネーやキャッシュカードで支払うことができる(フジ)。一方、1600社以上が出展した日本最大級の流通業界向けの展示会「スーパーマーケットトレードショー2022」が開催された。セルフレジなど最新の業務用機器が紹介された。寺岡精工の「AIセルフサービススケール」はディスプレイの下にあるカメラが、量りに乗せた野菜や果物など400種類をAI(人工知能)の技術で認識する。客は出力された値段とバーコードが書かれたシールを貼ってレジで会計する。ビニール袋に入れたままでもその種類を認識することができる(テレ東)。セルフレジでは困った問題も出ている。客が小銭を大量投入することで故障するケースが増えているという。セルフレジでは法律で硬貨1種類につき20枚までと決まっている(フジ)。

 

 

●注目点

「ウクライナ巡る問題・物価高・経済活動への影響は?」

回のウクライナをめぐる問題が今までの地政学リスクと大きく違う点は、タイミングと発生地域が悪いことである。欧米、特にヨーロッパでは強烈な物価高が進行している中で景気減速が懸念されている。ロシアとウクライナという資源国での地政学リスクであるため、天然ガスと原油に対してのインフレが加速している。特に問題なのはヨーロッパで、ドイツは第4四半期に経済ペースが減速して鈍化を始めており、ウクライナ情勢が景気の悪化にさらに拍車をかける可能性がある。ヨーロッパのスタグフレーション、景気自体はこの先、頭打ちになるとみられるが、物価の高騰がさらに進む可能性は高い。日本企業にとっては原材料高が影響として大きく響く。業績にも直接的、間接的にも影響しうる。特に繊維、化学製品、加工型の製造業は、原材料高が利益を圧迫しやすい状態となっている。エネルギー高に対して日本はどう対応していくのか、もう少し次元の上がった議論が必要である。一方、世界ではウクライナを支援する動きが広がっている。米国の宇宙開発企業、スペースX・イーロンマスクCEOは、スペースXが開発している小型衛星を利用した高速インターネット接続サービスをウクライナでも利用できるようにすると表明した。また、民泊事業を手がけるエアビーアンドビーはウクライナから避難した人、10万人分の民泊を無償で提供すると表明した。楽天・三木谷会長はグループが手がけ、ウクライナで広く普及する通話アプリViberの有料サービスを一部無料にすると表明した。楽天ポイントなどでウクライナへ寄付できるサイトを作り、これまでのところ3000万円以上の募金が集まっているという(テレ東)。

 

 

2月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・イオン、第2位・王将フードサービス、第3位・ファーストリテイリング」

2022年2月のテレビ報道CM価値換算ランキングは、「イオン」が36億2054万円で第1位となった。具体的には、「スプーンを木製や紙製に・イオンが来月から変更」「値上げ続々も…値段据え置く企業のワケ」等によるものであった。第2位は「“餃子の王将”の従業員が選んだメニューを、超一流料理人が値段に見合った味かどうかをジャッジする」などの報道で、「王将フードサービス」となった。第3位は「一流スタイリストのユニクロ春のおすすめコーデ」などの報道で「ファーストリテイリング」、

第4位は「ビックロビックカメラ新宿東口店で春の新作家電を大発表」などの報道で「ビックカメラ」、第5位は「国産“コロナ薬”実用化へ・塩野義が承認申請中」などの報道で「塩野義製薬」となった。第6位は「ソニー・米国の人気ゲーム会社を巨額買収」などの報道で、「ソニーグループ」、第7位は「味の素冷凍食品&大戸屋!売上番付」などの報道で「味の素」、第8位は「値下げで売上最高!無印良品&群馬から全国へ超激安スーパーSP」などの報道で、「良品計画」となった。第9位は「超激安スーパー・ジャパンミート売上番付!」などの報道で「JMホールディングス」、第10位は「ツイッタージャパンを取材」などの報道で「Twitter Japan」となった。

 

 

2月の人物ランキング

「第1位・日本銀行・黒田東彦総裁、第2位・東芝・綱川智社長、第3位・日本経団連・十倉雅和会長」

第1位・日本銀行・黒田東彦総裁18件(日銀大忙し!?ウクライナ緊迫で市場警戒など)、第2位・東芝・綱川智社長15件(東芝・複数子会社の売却検討・迷走…3分割を「2分割」になど)、第3位・日本経団連・十倉雅和会長14件(暮らしは?日本経済は?“賃上げ”の実現はなど)、第4位・楽天グループ・三木谷浩史会長12件(携帯電話・4番手の競争戦略など)、第5位・スリーエムジャパン・宮崎裕子社長9件(弁護士出身の運動部系…3Mジャパン社長の素顔など)、第6位・ソフトバンクグループ・孫正義会長8件(ソフトバンクグループ・大幅減益・最大の要因は中国など)、第7位・テスラ・イーロンマスクCEO8件(小型衛星の開発に活路など)第8位・トヨタ自動車・豊田章男社長8件(トヨタ・過去最高益・SUV好調…円安も追い風になど)、第9位・塩野義製薬・手代木功社長8件(塩野義製薬・国産のコロナ飲み薬…来週にも承認申請へなど)、第10位・松山油脂・松山剛己社長7件(社長の予想外な半生・廃業寸前からの大逆転劇!など)。

 

 

●テレビの窓

「サイバー攻撃でトヨタ全工場停止

ループ全体での販売台数年間1000万台。2年連続で世界首位となったトヨタ自動車に部品を供給している豊田市の部品メーカー「小島プレス工業」でシステム障害が発生した。そのためトヨタは国内全工場の稼働を全て停止すると発表した(※3月2日に再開済)。1日停止するだけでもおよそ1万3000台の生産に影響が出る見通しだという。「小島プレス工業」のHPはクリックしてみても、アクセスができない状態。どれだけの数の部品を納入できるか管理できなくなったためトヨタは全工場の稼働を停止させた(日テレ)。今回のサイバー攻撃の影響で日野自動車は国内すべての完成車工場で、ダイハツ工業は京都工場で3月1日の稼働を停止すると明らかにした。サイバーセキュリティ専門会社・LACの佐藤雅俊氏によると、ロシアからサイバー攻撃を仕掛けてくるのは主に4つの組織で1・旧ソ連時代の軍が母体の政府系、2・プーチン大統領に共鳴する民間企業、3・犯罪組織、4・愛国者。去年5月、米国最大の石油パイプライン会社がサイバー攻撃を受けて操業停止に追い込まれ、供給の不安からガソリンスタンドに長蛇の列ができた。今後、日本からの経済制裁の報復として、電力やガスなどのインフラ企業が狙われる可能性がある。サイバー攻撃はインフラ企業だけではなく、民間企業を巻き込むこともある。データのバックアップや暗号化といった基本的な対策を講じていく必要があるが、完全には防げない。攻撃を受けてしまった際は、いかに早くリカバリーするか、そのシステムの構築や訓練を国とともに連携していくことが重要になる(テレ東)。

 

JCC株式会社